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奥村研究室 成川佳史氏がATLAS TDAQ Week 2023 Poster Awardを受賞

LHC-ATLAS実験のトリガーおよびデータ取得に関する国際会議 ATLAS TDAQ Week 2023が9月19日~23日に日本で開かれました。この会議は年に2回、CERNまたはATLASコラボレーションTDAQプロジェクトに参加する大学・研究機関のある世界各国で開催されていますが、今回の開催地となった京都大学の会場には本センターの教員4人と大学院学生5人が参加しました。会期中のポスターセッションでATLAS実験の学生4人が自身で研究成果を発表しました。そのなかで特に研究成果およびプレゼンテーションの質が評価され、奥村研究室修士課程2年の成川佳史氏が、ATLAS TDAQ Week 2023 Poster Awardを受賞しました。

TDAQ会場の写真
TDAQ Week 2023でのポスターセッションの様子。発表・交流を楽しみ、国際的な場で、研究者としての基礎力を磨いていきます。(上写真の左側・下写真の中央が本人、2023年9月撮影)

研究課題

Integration and optimization study of a large-scale logic circuit for the first-level muon trigger at HL-LHC Presentation materials

受賞対象の研究について

本研究は2029年から始まる高輝度LHC-ATLAS実験に向けた初段ミューオントリガーシステムの開発に関するものです。高速ミューオン飛跡再構成回路はこれまでに個々のロジック開発が進められており、FPGA上に大規模論理回路として実装される予定です。論理回路上に実装された各ロジックが実際のハードウェア上で期待通り動作していることを検証することは、トリガーロジック完成に向けて必要不可欠で重要なステップとなります。
そこで本研究では、シミュレーションデータや過去の実験で取得された実データなど多様なデータセットを自由自在にハードウェアに入力し、実機を用いてトリガー演算を行なう次世代的な試験システムを構築し、大量の衝突データをエレクトロニクス実機でプロセスすることに成功しました。出力を実機を用いた演算と、ソフトウェアシミュレーションの間で詳細にわたり比較することができる機構を確立し、トリガーロジック検証試験を実現しました。
高輝度LHC-ATLAS実験に向けた本研究の重要性と構築した試験システムの革新さが評価されたのだと自負しております。

神戸大学での共同研究
本センターの教員や国内の他大学の研究者と共同実験を行なったときの様子。(手前から3列目の左側が本人、2022年9月撮影)

感想と今後の抱負

まず、このような研究・発表の機会をいただいたことに感謝いたします。また日頃のミーティングなどで、奥村准教授、石野教授をはじめ、研究室の仲間や、TGC検出器に携わる他大学・研究機関を含めた共同研究者のメンバーから多くのアドバイスをいただいたことにより、研究を進めることができました。本研究に携わっていただいた皆様に心から感謝を申し上げます。
ポスター発表では自分と近い研究をしている研究者の方々と専門的な議論を交わすことができ、非常に実りある時間を過ごすことができました。
今後も高輝度LHC-ATLAS実験に向けたミューオントリガーシステムの研究・開発を通じて、次世代の物理探索に貢献していこうと思います。