国際的な大規模実験の本質を知り、研究意欲を掻き立てられた1カ月間
4年ぶりにCERNで開催した夏の学校に修士課程大学院学生9名が参加
素粒子物理国際研究センターが主催する修士課程大学院学生のためのスタートアップ「CERN夏の学校」は、COVID-19のパンデミック後の3年はCERNとのオンライン接続により東京で実施してきましたが、今年の夏はようやく現地開催が復活しました。一流の研究者を間近に感じるグローバルな研究環境で、最先端の素粒子研究を深く学んで実践的に体験することにより、9名全員が大きく成長しました。8月7日から9月1日までの約1カ月間にわたるプログラムに参加した学生の滞在中の様子も含め、活動内容を紹介します。
レクチャー等
学校初日は、増渕助教(CERN夏の学校長)の全体ガイダンスと講師陣・学生の顔合わせより始まり、教員と博士課程の大学院学生とともに広大なCERNの研究施設等を見学しました。Run3実験が始まって1年が経過した研究現場の様子を実際に見聞きすることで、ATLASコラボレーションメンバーの一人として身が引き締まる想いを実感し、国際共同実験に挑戦することの決意を新たにした学生も多かったようです。
2日目以降は、さまざまなアプローチで素粒子研究の知識を深めるカリキュラムが続きました。カロリメータ、飛跡検出器、トリガー・DAQ、統計解析、機械学習、イベント再構成、量子計算、場の理論、超対称性理論の各レクチャーが、それぞれの分野を得意とする9名の教員により開講されました。ICEPP教員による講義に加え、ATLAS日本グループでかつLHC-Run3より開始されたFASER実験で活躍する九州大学の音野助教を招き、「FASER実験による衝突型加速器が生成するニュートリノの初観測と新粒子の探索」と題したセミナーをCERNで行なっていただきました(下の写真)。いずれも最先端の素粒子実験研究に直結する、普段の大学院の授業とは一味違った講義内容で、研究者として必要となる幅広くかつ専門的な知識を習得しました。
研究発表会
レクチャーに加え、夏の学校の期間中に参加学生が自分の研究内容を発表し、他の仲間や教員と議論する場として研究発表会の機会が週に3回開催されました。各参加者が週に1回、期間中に計4回の発表を行ない、高エネルギー物理の同じフィールドで幅広いトピックを探究する共同研究者に、研究の意義・成果や自身の意見を正確に分かりやすく伝え、質疑応答等で対話するスキルを磨く貴重なトレーニングになりました。自身の発表に加えて他の学生の発表を真剣に聞き、積極的な質問等を通じて、質の高い物理の議論を楽しみました。