田中研究室 舘野元氏が日本物理学会2021年秋季大会学生優秀発表賞を受賞
毎年秋に開催されている日本物理学会では、大会における若手(正会員のうちの大学院生または学生会員)の優秀な発表を奨励し大会をより活性化するため、「学生優秀発表賞」が昨年度より設けられました。
本センターでは、各研究室所属の修士課程・博士課程の大学院生20名以上が毎回参加し、ATLAS実験・MEG実験・ILC実験・Tabletop実験での最新の研究成果をプレゼン資料に纏めて、素粒子実験領域の全研究者の前で発表しています。
このたび、田中研究室博士課程2年の舘野元氏は、スイス・欧州合同原子核研究機構(CERN)におけるATLAS実験での新粒子探索結果を発表し、その内容や積極的な意欲が評価され、学生優秀発表賞を受賞しました。
対象発表
LHC-ATLAS実験における前方陽子検出器を用いた二光子共鳴探索の背景事象推定 発表資料
受賞理由
LHC-ATLAS実験ではこれまで、陽子同士の衝突から新粒子を介して生成される2つの光子をATLAS検出器で捉える新粒子探索を行なってきました。本研究は、このような二光子共鳴をなすイベントのうち陽子周辺の光子同士の散乱に着目した解析であり、多くの新物理モデルを包括的に検証できます。この場合はビーム陽子自体は反応によって壊れずに前方陽子検出器で捉えられるため、ATLAS検出器と前方陽子検出器の検出結果の整合性を要求することで背景事象を大幅に削減して探索感度を向上することができます。
ハドロンコライダーを光子コライダーとして用いる点と前方陽子検出器を用いる点で本解析は革新的であり、二光子の排他性から二光子共鳴の由来する反応の始状態まで区別できるため、将来の加速器実験の新たな可能性を示す解析として注目を集めました。また、前方陽子検出器の使用によって複雑になる背景事象の推定に際し、背景事象サンプルの生成と背景事象分布の推定をそれぞれ新たな方法でデータドリブンに行なったことが評価されました。
感想と今後の抱負
私が本解析を始めたのは博士課程1年次でしたが、修士課程2年次から光子-光子散乱に関する論文などをいくつか読んできました。それは前方陽子検出器を使って新粒子探索ができたら面白いと思ってのことであり、実際に解析を始めてからは通常の解析では経験し得ないような数々の問題に好奇心を持って取り組んでいます。物理学会で多くの方々に共感を示していただき、学生優秀発表賞の受賞に繋がったことはとても嬉しく思います。研究に指導・助言いただきました先生方や素晴らしい学会運営をしてくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
光子-光子散乱とATLAS前方陽子検出器を用いた初めての新粒子探索であるが故に早期の結果発表が望まれるため、より一層力を入れて光子-光子散乱の解析手法の基本形を確立するとともに、結果発表に向けて研究を推進していきたいと思います。
関連リンク
日本物理学会学生優秀発表賞(関連サイト)