齊藤真彦特任助教が2020年度高エネルギー物理学奨励賞および第15回日本物理学会若手奨励賞を受賞
将来の物理学や高エネルギー物理学を担う優秀な若手研究者の研究を奨励し、日本物理学会と高エネルギー物理学研究者会議のコミュニティをより活性化するために設けられた2つの奨励賞は、非常に伝統ある著名な賞であり、本授与は若手研究者の登竜門と言えます。
これらの賞は、大学の研究室で博士学位を取得した若手研究者が主に博士論文を応募し、選考委員会内で厳密な審議プロセスが重ねられた後、ノミネートが決定されています。特に、多くの研究者が参加する共同実験に基づく論文は若手研究者自身の寄与が本質的な評価基準となり、コラボレーションの中で主体的に研究し、いかに実力を発揮したかが問われます。
本センターの齊藤特任助教は、浅井研究室で修士課程後半より挑んだCERN LHC-ATLAS実験での研究を論文テーマとし、Run2実験のビッグデータから導き出した先進的な解析結果が評価され、両方の奨励賞を受賞しました。
博士学位論文
Search for direct Chargino production based on a disappearing-track signature at √s = 13 TeV with the ATLAS detector
博士論文
受賞理由
ATLAS検出器で取得された重心系衝突エネルギー13TeVのデータを解析し、超対称性理論(SUSY)から予想されるチャージーノが長寿命の場合について、かつてない感度で探索した。ATLAS検出器のピクセル検出器の4点だけのセンサー反応点から再構成された飛跡を利用することによってチャージーノ由来の短い消失飛跡の解析を可能とした。チャージーノの崩壊に伴う有意な消失飛跡事象は検出されなかったが、モデルに強い制限を課した。論文は、消失飛跡の構成、事象選択、背景事象、解析結果などについて丁寧に記述されており、全体として良くまとまっている。(選考委員会による受賞理由の抄訳)
感想と今後の抱負
本研究はLHC第2期運転が始まる前の修士課程の時にシミュレーションデータを用いた研究からスタートし、それ以降、第2期運転で取得された実データを使っての解析、新しい物理モデルでの解釈、将来加速器実験における感度評価と進んでいきました。一貫したテーマをこのような長いスパンで研究することができたのも、指導教官である浅井センター長を始め、ICEPPの皆様のご支援あってのものです。これまでの多大なるご支援に深く感謝いたします。
LHCはこれから第3期運転、そして高輝度LHCと続きます。また、ILCやFCCなどの大型加速器計画も進行中です。標準理論を超える物理の兆候が見えない現状ではありますが、長期的な視点に立ち、広い視野から新物理の探求に向けたチャレンジを続けていければと思います。
また、来年3月開催の日本物理学会第76回年次大会における受賞講演で、この論文成果を発表いたします。
関連リンク
●日本物理学会若手奨励賞(関連サイト)
●高エネルギー物理学奨励賞(関連サイト)