概要
国際共同研究で、新たな物理学の地平を目指します。
本センターは、最高エネルギー(エネルギーフロンティア)での素粒子物理学研究を推進する我が国の中心拠点として、複数の国際共同研究プロジェクトを行なっています。宇宙の根本にある法則をつきとめ、人類の物質観や宇宙観に変革をもたらすという究極のテーマを目標に、学術の新しい価値創造に挑んでいます。
ATLAS実験は、スイスのジュネーブ市郊外、スイスとフランスの国境に位置するCERN(欧州合同原子核研究機構)で行なわれている国際共同実験のひとつです。
CERNは世界の素粒子物理学研究者の半数以上(約1万人)が訪れる世界最高水準の研究拠点で、本センターも1980年代から共同実験に参加しています。
CERNには世界最高の衝突エネルギーを誇る円形加速器LHC(大型ハドロン衝突型加速器)があり、2012年7月のヒッグス粒子発見という素粒子物理学の革命の舞台となりました。そのとき大きな役割を果たしたのが、本センターが参加するATLAS実験で、日本の貢献が広く世界的に認められています。
MEG実験は、電子の仲間「μ(ミュー)粒子」が引き起こす非常に稀な現象の観測を目指しています。その目的は、素粒子の「標準理論」を超える「超対称大統一理論」の検証で、スイスのチューリッヒ郊外に位置するPSI(ポールシェラー研究所)を拠点に、2008年から実験を行なっています。
PSIは、円形加速器のシンクロトロン放射光施設やμ粒子の生成装置など、独自の研究設備を保有しています。
MEG実験は本センターの研究グループが設計・提案し、イタリア、スイス、アメリカ、ロシアの研究者たちと取り組む国際共同研究です。2013年夏に第1期実験を終え、観測感度を一桁高めた第2期実験(MEG II)を、2022年から始める準備を進めています。
ILC(国際リニアコライダー)計画は、世界の素粒子物理学者たちが長年夢見た壮大な国際共同プロジェクトです。アジア・欧州・北米の研究者たちが共同し、日本でも約30年にわたって検討・準備が進められています。
ILCは、CERNのLHCとは異なる線形(リニア)の加速器で、このタイプで世界最高エネルギーとなります。加速器の性質の違いから、より高精度の実験が可能となり、LHCでの研究成果をさらに進展させると期待されています。
ILCの建設候補地として、日本の北上山地が挙げられています。実現すれば、日本の素粒子物理学研究はもとより、関連産業や周辺自治体にも大きな波及効果が出ることでしょう。世界が注目する素粒子物理学の一大拠点を日本につくるべく、本センターの研究者が力を尽くして活動しています。