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From alumni

スタートアップ企業で働くいま
も生きているICEPPでの経験

京都フュージョニアリング株式会社・
Business Development Dept. マネージャー

Miki Nishimura

いま勤めているのはフュージョンエネルギー(核融合)のシステム全体を設計開発するスタートアップ企業で、私は事業開発部で営業などをしています。もともとICEPPではミュー粒子の研究をしていて、スイスのポールシェラー研究所でMEG II実験に従事していました。卒業後はKEK(高エネルギー加速器研究機構)で、タウ粒子の研究をしました。データ分析や測定器自体の研究開発が主で、関わっている研究者が25カ国およそ900人という大規模なもので、とても勉強になりました。このときに経験したデータ分析の面白さ、つまり観察したい事象をどうやって取りにいくか、アルゴリズムや戦略を考えたりすることの面白さが、私の次のキャリアにつながっていったように思います。

KEK素粒子原子核研究所での博士研究員時代

その次の仕事は、企業の課題を解決するコンサルティング会社でした。いろいろな人にものすごく毛色が違ったねと言われるのですが、私がいた部署はDXを担当としており、そこで、データ解析の支援をしていました。ICEPPでの経歴がとても評価されたんですね。就職を決めたときは、研究者とは違う世界を広く見てみたいという気持ちがあり、その会社を選びました。ものごとの根源、本質に迫る素粒子物理学が自分にとって一番魅力的なものだと今も思っているのですが、ただもう少し〝幅〟を広げてみたかったのですね。コンサルティングでは、私が担当するソリューション軸と、各産業のエキスパートがいるインダストリー軸とがあり、その両方の軸からお客様に解決策を提示するわけです。そのため、実際にいろいろな業界を見ることができて、とても面白かったですね。

ただ、知的好奇心は満たされていたものの、お客様の支援という仕事にとどまらない、なにか仲間と一緒にビジョンを追いかけるような仕事をしたいという思いが強くなり、そんなときに今のこの会社に出会いました。

24時間の三交代制でデータを取得、PSIで夜間シフト中の様子

フュージョンエネルギーの分野で、スタートアップは世界で40社以上、日本には4社ほどあり、多くのスタートアップが2030年代には核融合での発電を実現するという目標を持つ夢のある分野です。私は技術的な理解をベースに顧客への提案を行い、案件を獲得するといった仕事をしています。会社は120人ほどの規模でして、ICEPP時代のMEG実験と同じくらいなので、私にはしっくりきます。外国人の社員もいますので、MEG実験のときにイタリアの研究者たちと真夜中まで一緒に作業をしていた日々を思い出します。実験という泥くさい、物作り的な仕事で、大きな目標に向かって何年もかけて一つのものを造りあげていくということではICEPPと一緒だと思いますし、そのためにICEPPでの経験はいまものすごく役立っています。

プロフィール

2014年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(森研究室)修士課程修了。2018年同博士課程修了、博士(理学)。高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所・博士研究員、株式会社クニエ・コンサルタントを経て、2022年8月より現職。